「お待ちしておりました」 クミヤ・クミ――そう名乗ったその女はいつもと変わらず時計の螺子を巻いていた。 キリキリ・・キリキリ・・と、螺子を巻く音は確かに聞こえるのに館の中には響かない。 止まない雨の音も、足音も、扉を開く音も、ここでは何一つ響かない。音はただ一瞬のもので、それ以上でもそれ以下でもない。 「どうぞ」 いつもなら螺子を巻き終えれば閉じてしまう時計の上蓋ではなく、長針に手をかけクミヤ・クミは体の位置をずらした。 それまで彼女の体で隠れていた柱時計の振子がイヴリースの見つめる先で静止し、長針が逆向きに回される。 「ごゆっくり」 意識の外で扉の開く音がした。 コツ、コツ コツコツ コツ、コツ・・コツ 「お姉ちゃんだぁれ?」 コツ、コツ 「お前それ俺んだぞ!」 コツ、コツ、コツ 「死んじゃえばいいのに」 コツコツ・・コツ 「あんた、誰?」 コツコツコツ 「愛してるって言ったのに!!」 コツ・・コツ 「何それ、奢ってくれんの?」 コツンッ 「――初めまして、私」 |