「君に僕の大切な物をあげよう」


 男は言った。


「行くのね」


 女は答えなかった。


「シュピーゲル、君は賢い人だ」
「貴方は私を買い被りすぎているわ、プペ」
「そんなことはないよ」


 男は女に言った。


「僕は君だから、安心してこれを残していけるんだ」
「・・・」
「君以外のどんな人間にだって、これを託すことなんて出来ないよ」


 女は決してそれを受け取ろうとはしなかった。


「ただ、僕のしたことによって君が失われてしまうことだけが恐ろしい」


 それでも、男はそれを残した。


「どうか変わらないで」


 残されたそれ≠ヘ女の魂へと溶け込み、シュピーゲル≠殺したが、女は決して男を怨まなかった。


「馬鹿」


 女はただ見送った。


「生きている限り、変わらない者なんてないのよ」


 彼方へと飛び去って行く竜を。





「さよなら」