不死族。それはその名の通り、死する事のない不老不死の一族。 淡々と訓練された通りの陣形を取り、引き金を引き、敵を倒していくヴァチカンの「対不死族部隊」。その作戦行動を離れた場所で見ていたリア・ブラッドローズは、血の様に赤い目を剣呑に細めた。 「任務完了」 ミッションコンプリート。――形式だけの部隊長を務める男が抑揚のない声で告げ、銃声が止む。 「―――」 リアは足下を蹴った。 「ここにいて」 少年は一人だった。 「絶対に出ちゃだめよ!?」 両親とはとうの昔に死別し、つい最近親切な女の人に拾われた。 彼女は東の果てに、自分たちが平和に暮らすことの出来る場所があるから、一緒に行こうと言ってくれた。 彼女と数人の仲間たちは、少年と同じ「不死族」だった。 「任務完了」 冷徹な声が落ち、はっとして少年は蹲ったまま顔を上げた。 「っ」 目の前には旅の仲間が一人、空ろな瞳を天井に向けたまま四肢を投げ出している。 「ぃや、だ」 掠れた声で、自分にも届かないほど小さく少年は呻いた。 あの時と同じだ。――僕を逃がすために父さんと母さんは殺された。 「ゃ、」 ドクンッ。少年の言葉に合わせ彼の心臓が強く脈打つ。 「だ・・」 金髪碧眼。夜の闇に溶け込むことのない彩色の少年が、またゆっくりと項垂れた。 「――嫌だ」 仲間の体から流れ出した命の水が、闇を浸食し床を伝って少年の下へとたどり着く。 「もうこんなのはっ」 けたたましい音と共に吹き飛んだ宿屋の外壁。 「ガアァァァァァッ!」 獣じみた咆哮と共に、不死族の血で赤く塗れた街のメインストリートへと降り立つ少年。 「散開」 部隊長の落した声は、あくまで機械的な物たっだ。 「撃て」 「ガァァッ」 隊員たちに取り囲まれ、無数の鉛玉をその身に受けようとも少年は叫ぶことをやめない。 それがあたかも死んでしまった仲間たちへの慟哭のように聞こえ、部隊長の脇をナイフ片手に駆け抜けたリアは、暴走した不死族の首を横薙ぎに払う腕に力を込めた。 肉を断つ感触が脳を揺らす。 「――Amen.」 首と胴とを切り離され、不死族吸血種の少年は仲間の屍によって作られた血の海へと沈んだ。 「任務完了」 |