ボクはずっと永いことこの島を出ていない。それはボクという存在の在りようだから不満はないけど、ただ、ボクの周りにいる人間は面白味に欠ける。真面目すぎて時に退屈。
 ボクはこの島の守。言霊の一族の巫女が代々――って言っても、あそこの巫女はいっつも華月神の生まれ変わりだから同じ奴だけど――「門」を守るのと同じで、ボクは「門」のあるこの島、「彩光」を守ってる。守らなければならない。そのために生まれた。
 でもボクは「ボク」単体じゃ何の力も使えない――「最古の神器」の欠片みたいに――から、彩光に住む、人間の、特別な一族が代々ボクを継承――って奴らは言うけど、ボクは「契約」って言うほうが好きだ――して島を守ってきた。
 今までもこれからも、ずっと、そうなんだろう。そのことだけは疑ったことがない。面白味に欠ける連中だけど、一応、ボクにとっては必要な存在なんだ。――この島を守るために。



「何故こんなことが・・」



 だから、生まれて何年か目でボクを継承――「契約」って言うほうが好きだけどホントのところどっちでもいい――することが決まっていた奴に他の神が憑いて、そのせいでそいつが資格を失っても、ボクにこれといった感慨はない。強いて言えば「ナイスサプライズ」だ。
 どうせ代わりは用意されるし、いないなら、別に一族の人間じゃなくったっていい。
 「一族の人間以外とは契約しない」なんて、まだ若かったボクの単なる我侭なんだから、実際は純粋な人間なら誰だってボクを扱える。――この島の人間はそんなことすら忘れてしまったけど。



(・・・ねむ、)



 思い悩むエリカをそのままに、ボクはふっ、と体の力を抜く。
 次の瞬間そこにあった肉体は消えうせ、ボクの存在は――「継承者」の持つ水晶のペンダントに灯った碧[ミドリ]色の炎に宿る――思念体へと戻った。
 しばらく眠っていれば、きっとその間にエリカが新しい「継承者」を見つけてくるだろう。



(おやすみ)



 ボクはただそれを待てばいい。






























「――やか、彩花」
「っ」



 頭が痛い。体が、重い。



「ど、して・・あたしは、これじゃ・・っ」
「何故、そんなに怯えるんですか? これが貴女の願いでしょう?」
「あたしは、殺されるわ! エリカみたいに!!」
「ありえません」



 世界がまるで色を失ったみたいだ。
 なのに蒼燈の真っ青な目だけが確かな色を持っていて、――あたしの世界がぼんやりと滲む。



「そんなことっ」
「僕が貴女を守ります」
「っ・・・あたしの、意味が・・」
「お願いですから、」



 精神[ココロ]を差し置いて正常に機能する身体はかけられた言葉をいちいち拾った。
 それでも、あたしは、





「生きることに理由を探さないでください」





 独りでなんか生きていけない。






























 一目見てそれが人間[ヒト]でないとわかった。あたしの中に流れる血が、告げた。
 けれど写真ではなく本当にその姿をこの目で見た時は違った。彼女は他とは少し違うけど確かに人と呼べる存在で、髪と目の色も昔と違ったけど、確かにあたしの姉だった。





 そうあるに相応しい人だと直感した。










「姉さん!」



 柄にもなく取り乱して――とは言っても、彼女とは初対面だからこれが地だと思われるかもしれない――走った。走って、あたしは躊躇う間もなく彼女に抱きついた。
 彼女の後ろにいた男の人が――嗚呼、あたしは彼を知っている――、驚いたような、どこかほっとしたような表情を浮かべているのが彼女の肩越しに見える。



「あや、か?」
「そうよ、姉さん!」



 嗚呼、なんてことだろう。彼女があたしのことを知っていたなんて!
 会ったことなんてないのに。あたし達は、姉妹なのに本当に一度だって会う事も叶わず、あたしだけが一方的に貴女のことを知っているだけだと思っていたのに。



「あたしの姉さん」



 なんて素敵な誕生日なんだろう!






























 全てが色鮮やかに見えた、あの日が遠い。