クラブハウスのロビーで壁にもたれる沙鬼を一瞥し、暁羽はそのままエントランスを抜けた。



「冬星は?」
「まだ門の傍にいる」



 何も言わず暁羽に続いた沙鬼はかけられた質問に淀みなく答え、煌が傍にいる、と付け加える。
 暁羽は人気のない建物の裏手に回りこむと立ち止まり、肩越しに沙鬼を顧みた。



「私が行く。煌を戻して」
「わかった」



 そして姿を消す。
 残された沙鬼はすぐさま言われた通り煌を呼び戻した。



「(もういいの?)」



 現れた煌の様子から、冬星に――良くも悪くも――変化がなかったことを悟る。



「暁羽が行った」
「なら大丈夫だね」



 体の向こう側が透けて見える――存在自体頼りない――思念体から、質量を伴った実体へと体を変化させ煌は地に足をつける。
 沙鬼は何も言わず踵を返した。



「やっぱり神器の影響だと思う?」



 その後に続きながら自分の手をしげしげと眺め煌は首を傾げる。
 以前は数えるほどの人にしか見えない思念体としてしか活動出来なかった自分が、こうして誰にでも見え触れることの出来る肉体を手に入れたのは、つい最近のこと。
 心当たりは一つ。



「さぁな」



 そっけない沙鬼の返事に煌は笑った。
 そう、きっと彼女にとってはこんなこと本当にどうでもいいのだろう。――今度暁羽さんにでも聞いてみようか。



「・・・」
「沙鬼?」






























「な、んで・・」



 今日、祖母でありこの学園の理事長でもあるリカコの元へ行くことは、何日も前から決まっていたこと。



「ここにいるの、」



 滅多な事では慌てない心臓が目の前の光景に早鐘を打つ。ドクドクと、煩い。



「おや、いてはいけませんか?」



 クラブハウスのエントランスに立つ男は笑った。夢の中と、同じ笑い方で。
 あたしは呆然と呟く。



「夢だったんじゃ・・」



 やっとここまで来たっていうのに。





「連れて行ってあげましょうか?=v





 台無しだよこれじゃあ。










「貴方、誰?」



 くしゃりと表情を歪めた彩花は深く俯き、夢の続きを紡ごうとする。
 蒼燈は見下ろしていた彼女に並び、その耳元で囁いた。



「蒼燈」



 分かたれた名を。



「そう、ひ」






























 嗚呼、何てことなの。